コラム

異常気象と雨庭

雨庭とは

最近、「雨庭」という言葉を耳にする機会がふえていませんか。
雨庭というと、しっとり雨に濡れた風流な日本庭園をイメージします。
ところが、今注目を集める「雨庭」は、1990年、アメリカのメリーランド州で地球温暖化による豪雨やハリケーン被害への教訓から始まった治水対策のひとつで、アスファルトや屋根などに降った雨を集めて貯留し、時間をかけて地下に浸透させるRain garden(雨庭)のことです。

この雨庭、もともと自然が持っている機能を活かした『グリーンインフラ』と言われる取り組みで、環境デザイン学を研究してこられた森本幸裕 京都大学名誉教授は、これを「柳に風」型の街づくりと表現されています。
「柳に風」の意味は、柳が風になびくように逆らわない物は災いを受けないということ。
「都市の各地に100ミリ程度の雨を蓄えられる小さな雨庭があればゲリラ豪雨による内水氾濫(はんらん)のリスクを減らせます。」と仰っています。※1

小規模な雨庭を住宅、広場や駐車場の隅、道路の植栽帯などに数多く造ることで、雨水が一気に下水道に流れ込み、溢れるのを防ぎ、下水の排水能力を超える場合でも、雨庭を含む環境システム全体で被害を最小限に抑える減災効果が期待できます。

さらに森本名誉教授が、「地下に巨大な貯水槽をつくるより、分散して雨水を貯める方が安上がりなだけではなく、湿地や草地が消失し絶滅の恐れがある生きものにとって、雨庭は避難場所となるのです。」と言うように、防災以外にも多くの利点があり、環境に配慮した街づくりのアイデアとして、京都市が推進する「京都市生物多様性プラン」にも取り上げられています。※2

昨年、2018年はその年の漢字「災」が象徴するように、世界中の気候が異常を記録しました。

熱波が北半球を襲った6~7月、世界各地で最高気温の記録が塗り替えられ、日本では北海道胆振東部地震、大阪府北部地震、島根県西部地震、西日本豪雨、台風21号、24号の直撃、7月に観測史上最高の41.1℃を記録。7月16日~22日の1週間で22,000人以上が熱中症で搬送されました。
これらの異常気象と地球温暖化の因果関係については、諸説がありますが、環境省のHP(https://www.env.go.jp/earth/nies_press/effect/index.html)の中で、地球温暖化が日本の気候に与えたと考えられる影響として次のように書かれています。

【気温】
20世紀の100年間で、日本の平均気温は約1 ℃上昇。特に都市部ではヒートアイランドの影響も追加され、東京では約2.9 ℃上昇。また、真夏日、熱帯夜の日数も都市部を中心に増加、真冬日の日数は減少しています。
【降水量】
一部の地域で大雨の発現回数は増加、逆に降雪量は減少しました。
【海水位】
1970~2003年の毎年、日本沿岸の海面水位は1年ごとに2 mm程度上昇しました。

そのほか自然への影響として、北海道の高山植物が減少し、ソメイヨシノの開花日は早く、イロハカエデの紅葉日が遅くなったなど動植物への深刻な影響が報告されています。
このような状況に、国土交通省は平成27年度「第4次社会資本整備重点計画」の中に、グリーンインフラの取り組みを推進することを盛り込み閣議決定しました。
地表面をコンクリートやアスファルトで覆ってしまった都市化(グレーインフラ)だけでは都市型集中豪雨に対応しきれない反省から、グリーンインフラを積極的に活用し自然環境の機能を引き出して持続可能な社会を実現していこうという考え方が取り入れられたのです。

言うまでもなく異常気象は、地球規模の現象ですが、局所的なゲリラ豪雨による浸水被害など、私たちの生活にも、大きな影響を与えています。それに対する私たちの身近な取り組みとして、個人の住宅に「雨庭」を設置したり、雨水を貯めて利用する「雨水タンク」を設置することで防災や水資源の有効活用に貢献することができますし、行政によるさまざまな支援を受けられるようになってきました。

例えば、「家庭用雨水タンク」や「雨水浸透ます(いわゆる雨庭)」を設置した場合、京都府下のほとんどの市町村で設置費用について補助金を受けることができます。※3

今に通じる古の庭園技術

毎日新聞の記事によると、
https://mainichi.jp/articles/20181212/k00/00m/040/091000c
室町時代に建立された相国寺の枯山水庭園は、「雨が降っても庭園に水があふれたことがない」とのこと。高い浸透機能と貯水機能を合わせると、日本の年間平均降水量1600ミリの約半分に当たる計850ミリの雨が降っても庭園から水があふれない可能性があるのだそうです。

近世に造られた枯れ山水の庭園にも雨庭のような治水機能があるとみられ、この研究グループの山下三平九州産業大学教授(河川工学)は「数百年前の庭師の工夫は現代日本にも通用する。伝統的な寺院の雨水の処理方法から学ぶところは多いはずだ」と話されています。

さすが、古の智慧が今も息づいている京都ですね。

洛北造園も、「雨庭」の設置やヒートアイランド対策として「屋上緑化」などの提案を積極的に行い、実績を重ねています。

洛北造園の実績

NPT(株)加賀工場(雨庭)

 

 

 

 

 

 

 

(株)ユーシン精機様(屋上緑化)

 

 

 

 

 

 

 

※1 柳に風型都市の治水:雨水は降った場所での貯留と利用を図ることを旨とする『流域治水』が基本
※2 町家の庭は都市の森:京都では一軒一軒の庭は小さいものですが、町家の庭が多様な動植物を育む都市の中の貴重な緑地として機能しています。。街区単位で見ると多様な植物に恵まれ,「都市の森」として生きものの生息場所を提供し市街地の生物多様性の維持に貢献しています。(京都市生物多様性プラン~生きもの・文化豊かな京都を未来へ~)
https://www.city.kyoto.lg.jp/kankyo/page/0000164243.html
※3 市町村によって助成対象や金額が異なりますので、各自治体の窓口にご相談ください。
******参考*******
http://www.kensetsu-plaza.com/kiji/post/17971
けんせつPlaza「グレーインフラとグリーンインフラ ~自然資本の恵みを活用する~」
http://green-infra.jp/green-infra/01/
一般社団法人グリーンインフラ総研「グリーンインフラとは」
http://www.mlit.go.jp/common/001179745.pdf
国土交通省 総合政策局 環境政策課 平成29年3月作成資料
「グリーンインフラストラクチャー ~人と自然環境のより良い関係を目指して~」
https://www.city.kyoto.lg.jp/digitalbook/category/11-8-0-0-0-0-0-0-0-0.html
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